一般社団法人屋久島アカデミーが主催する「屋久島大学プロジェクト」が、令和6年度観光庁「サステナブルな観光コンテンツの高度化モデル事業」に採択され、実証事業を開始することとなった。このプロジェクトは、世界遺産である屋久島の豊かな自然や文化を多角的に紹介することで、ガイドのインタープリテーション力の強化を図るものである。具体的には、オンラインイベントやリアルイベント、オリジナルツアーを通じて、屋久島の地域資源の本質を伝えることを目指している。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環として、AIチャットボットの活用やスターリンクによる衛星通信サービスを導入し、情報発信の手段を拡充し、増加するインバウンドニーズへの対応力強化を図ることも目的の一つである。
本プロジェクトでは、ツアー代金の一部をガイドの育成や環境保全に充てることで、島内の観光資源を守り、魅力的なまちであり続ける好循環を創出することを目指している。今年7月からは、オンラインイベント「『知る旅』屋久島」シリーズを開催しており、毎回一つのテーマを掘り下げることで、屋久島への旅をより楽しいものにする新たな視点や魅力を発信している。このイベントには、NHKドキュメンタリーで「伝説の超巨大杉を追う」の捜索隊長を務めたエコツアーガイドの小原比呂志をはじめ、昨年度からのガイド研修で育った若手ガイドたちが登壇する予定である。
さらに、スターリンクを利用したライブ中継配信にも初挑戦し、屋久島の自然の魅力を世界に届ける試みが進められている。特に、秋頃には沢登りツアーのフィールドから、また11月下旬には冬の屋久島の魅力を伝えるライブ中継が予定されている。また、リアルイベントとしては、屋久島の歴史や民謡に焦点を当てた「屋久島ナイト」が8月23日に東京で開催される。このイベントは、屋久島焼酎の飲み比べを楽しみながら、五感で屋久島を体感できる内容となっている。
さらに、昨年度好評を博した「屋久島大学」発のオリジナルツアーも今年も開催される予定である。これらのツアーでは、屋久島の自然や民俗芸能、歴史といった多様なテーマを専門家の案内のもとに掘り下げて紹介する。このようにして、定番ツアーではなかなか見ることのできない屋久島の魅力を伝えることを目指している。
「AI屋久島チャットボット」もプロジェクトの一環として開発され、来島者や地元ガイドからのフィードバックを反映し、日々学習を重ねている。これにより、観光客にとって満足度の高い旅行体験を提供することを目指しており、今年度はさらにデータの最適化と情報の拡充を進める予定である。日本語だけでなく、英語での対応も強化することで、インバウンド旅行者のニーズに応えるとともに、より多様な旅の楽しみ方を提供することができるようになるだろう。