株式会社おてつたびは、シニア・プレシニア世代の参加者が増加していることを受け、50歳以上のおてつたび参加経験者を対象にアンケート調査を実施した。調査の背景には、特に地方における農業や観光業といった主要産業分野での人手不足が深刻化している現状がある。リクルートワークス研究所の予測によれば、2030年には約341万人、2040年には1100万人以上の労働供給が不足するとされており、この課題に対応すべく「おてつたび」は事業者と働きながら旅を楽しむ旅行者をマッチングし、地域経済の活性化に貢献してきた。
コロナ以降、テレワークやワーケーションの普及により、地方移住への関心が高まる中で、経済的自由を目指す「FIRE」という選択も注目されるようになった。この流れにより、「おてつたび」の利用者層も若年層からシニア世代に広がり、50歳以上の参加者は2021年の8%から2023年には23%へと増加した。シニア層は、日本各地を訪れることや新しい経験をすることに魅力を感じており、奉仕活動よりも自己の人生を豊かにしながら経済的負担を軽減できる点が支持されている。
アンケート回答者の属性としては、50歳以上の参加者のなかで最も参加割合が多い年代は60~64歳の33.3%であった。また、男性よりもやや女性の参加割合が多い結果となっている。さらに参加者の居住地は関東が最も多く、次いで中部、近畿となっている。職業はパートアルバイトが35.3%を占め、次いで会社員21.3%となった。
おてつたびへの参加回数については40%の人が1回と回答したが、2回参加者は24.8%、5回以上は19.6%と継続参加者が半数以上を占めている。これはおてつたびに参加することで得られた経験や感動をもう一度味わいたいと思う参加者が多いということを指していると考えられる。
さらに、調査の結果おてつたびに参加した動機の中で最も多かったものは「日本各地、いろんな地域に行ってみたい」というもので、次いで「新しい経験がしたい」「旅行や温泉が好きだから」「滞在費や旅費を節約できる」が上位に挙げられた。この結果から、参加者は「社会貢献をしたい」といった奉仕活動というよりも、自身の人生をより豊かにすることや、経済的負担を削減しながら旅を楽しめることに魅力を感じていることが明らかとなった。また、アルバイトという形態でありながらも「生計の維持のため(生活費を補うため)」や「貯蓄・貯金をするため」という理由を選んだ人は少数派であった。ただし、「滞在費や旅費を節約できる」が4位に入っていることから、お金を稼ぐためではなく、コストを抑えて旅を楽しむ意図が伺える。
おてつたびの参加先で「出会えてよかった」と思うような人との出会いがあったか、という問いに対し、86.1%の人が「はい」と回答している。また、「出会えてよかった」と思えた相手には、受け入れ先の人(社員・従業員など)が多くを占め、次いでおてつたびの参加者が挙げられた。理由については従業員が真摯に仕事に向き合う姿や貴重な体験ができたこと、年代の異なる参加者と交流ができたことなどが挙げられている。
またおてつたびを利用したいか、という質問に対しては94.3%の人が「利用したい」と回答した。また、シニア・プレシニア世代が「おてつたび」を活用するメリットについて質問したところ、今まで未経験の職種を経験したり視野が広がることや今までの人生観を振り返ることができること、社会との繋がりを保つことなどが挙げられた。
「おてつたび」では、現地までの交通費は自己負担となるが、旅先で働くことで報酬を得られるため、旅行の経済的負担を軽減しながら様々な地域での経験を積むことができる。また、地域の人々との交流や新たな地域の魅力を発見できる機会にも恵まれ、参加者からは一生の思い出となる交流や、新たな視点を得る経験ができたとの声が多く聞かれている。
おてつたびの参加者は、全国47都道府県にわたる1600の事業者に派遣され、宿泊業や一次産業だけでなく、酒造や水産加工、飲食業といった多様な業種で地域の人手不足を支えている。現在、登録者数は6万人を超え、シニア層を含む幅広い年代が利用しており、地域経済の活性化と人手不足の解消に今後も貢献していく。