静岡県熱海市と株式会社JTBは、2023年10月に包括連携協定を締結し、新事業「意外と熱海 for Biz」を展開している。この事業は、観光地として知られる熱海市をビジネス利用にも適した環境として提供するもので、法人担当者のニーズに対応するための「Service Desk」を設置し、約100件のビジネス向け宿泊施設や研修施設、アクティビティを紹介している。また、法人利用者向けに情報サイトを運営し、ビジネスの利用を促進する取り組みが行われている。
「意外と熱海 for Biz」は、熱海市とJTBが交流人口や関係人口の拡大を目指して包括連携協定を締結し、その一環として実施されており、個人旅行向けブランドとして確立された「意外と熱海」をビジネス利用向けにリブランディングし、2024年4月から新たな形で提供されているものである。本事業は、ワーケーションや研修、会議など、法人の様々なニーズに応えるための内容を提供している。
この事業の背景には、株式会社machimoriと株式会社未来創造部が実施した研修プログラムを通じた体験者調査がある。この調査では、熱海市で行われた企業研修やワーケーション参加者の満足度が高く、仕事にポジティブな影響を与えていること、再訪意向が高いことが明らかになり、熱海は観光地としてだけでなく、ビジネス環境としても優れた場所であることが再確認された。研修への満足度に関する11段階評価で平均8.7点を記録し、約80％の参加者が8点以上の評価をつけた。さらに、Net Promoter Score（NPS）を援用して算出された結果は48.57ポイントに達し、非常に高い評価が示された。研修が仕事に与える影響についても88.1％の参加者がポジティブな影響を感じていると回答している。
熱海市での企業研修やワーケーションへの参加者は、企業規模や業種に偏りがなく、大企業からベンチャー企業まで幅広い。また、年齢層では36〜40歳が最も多く、28.0％を占め、職種では管理職が43.4％を占めた。研修内容としては、リーダーやマネジメントの育成、チームビルディング、戦略立案会議、社会課題の解決を考えるワークショップなどが実施されている。
参加者の声として、「オンラインよりも対面研修の方が多くの学びを得られた」「五感を使って学べる環境が新鮮だった」といった意見が挙がっている。また、熱海でのビジネス目的での再訪意向は5段階評価で平均4.3点を記録し、主な理由として「熱海の街が好きになったから」が54.1％、「熱海の食に興味がある」が43.2％という結果が得られている。
熱海での研修プログラムを提供する株式会社machimoriは、熱海市に拠点を置き、空き家物件のリノベーションなどを通して熱海の活性化に取り組む「まちづくり」の会社である。まちづくりや事業を通して培ったノウハウを活かして、地域の現場に飛び込み、当事者が直面する複雑な社会課題に挑み、新たな価値を創出する越境型研修プログラムなどを提案している。また、株式会社未来創造部は、熱海の海での藻場の再生によってCO2を吸収するブルーカーボンプロジェクトや、端材や剪定枝など、地域の未利用資源を適切な形でバイオ炭にする「炭化」について、リアルな現場体験×サステナビリティのエキスパートによる研修・ワークショップを提案する。