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【取材】俵山温泉にまち全体をひとつの宿に見立てる新宿泊モデル「俵山まちごと旅館」開業

千年以上の歴史を持つ湯治のまち、山口県・俵山温泉で、新しい宿泊モデル「俵山まちごと旅館」が10月10日に開業した。温泉街全体をひとつの宿と見立て、地域の宿泊施設を一体的に運営する取り組みだ。

宿泊者には、「町の湯」「白猿の湯」の2つの共同浴場を何度でも利用できる入浴手形が渡され、昔ながらの外湯文化を楽しめる。受付拠点には旧町湯「川の湯」を改装した施設を活用。地域法人と民間企業が連携し、湯治文化を次世代につなぐためのまちづくりが本格的に動き出している。

本記事では、「俵山まちごと旅館」が誕生した経緯やその特徴などについて、運営会社の株式会社俵山クリエイトの親会社である瀬戸内ブランドコーポレーションに取材した。

▷予約サイト: https://www.chillnn.com/198a114032dfc

―――「俵山まちごと旅館」構想が生まれた背景と、俵山温泉の再生においてどのような課題意識をお持ちだったのかお聞かせください。

俵山温泉は、かつて「西の横綱」と呼ばれるほど賑わい、最盛期には年間70万人もの入湯客が訪れていました。しかし、ライフスタイルの変化などにより、現在は11万人ほどまで減少しています。

その要因として、俵山温泉の魅力を伝える活動が停滞していたことや、時代のニーズに対応しきれなかったことが挙げられます。その結果、旅館経営者の高齢化や施設の老朽化など、受け入れ態勢にもさまざまな課題が生じてきている状況です。

こうした状況を受けて、地域が育んできた俵山温泉と湯治文化を守り継ぐために、官民が一体となって再生に取り組むことを決め、そのロードマップとして2024年3月に「俵山温泉グランドデザイン」を策定しました。

―――そのなかで生まれたのが、「まちごと旅館」という構想ですね。どのような特徴があるのでしょうか。

▲「町の湯」

俵山温泉の特徴のひとつに、各旅館が内湯を持たず、宿泊者が地域の方々と同じ共同浴場を利用するという独特のスタイルがあります。この点に着目し、イタリア発祥の「アルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)」の考え方を応用しました。

つまり、まち全体をひとつの宿と見立て、宿泊者がまちを歩きながら滞在を楽しむ――それが「俵山まちごと旅館」構想です。現在はこの考え方を、グランドデザインの柱として位置づけています。

▲「白猿の湯」

―――「まち全体をひとつの宿」という新しい宿泊モデルは、従来の旅館と比べてどのような体験価値を提供するものですか?

▲宿泊者には入浴手形を配布(有効期限:チェックイン~翌日15時まで)

宿泊機能を意図的に分散させることで、宿泊者の方々にまち歩きを楽しんでいただけるようにしています。

まちを歩く中で、地元の人との交流やまちかどでの小さな発見を通じて、俵山に息づく湯治文化そのものを体感していただける仕組みです。

―――地域法人「俵山みらいデザイン」との二層構造によるまちづくり体制には、どのような狙いと効果がありますか?

▲受付スペース「川の湯」

目的は、シティプロモーションと個別事業運営の最適化です。シティプロモーションは地域全体に経済的な恩恵をもたらすため、一般社団法人として地域全体で担う仕組みとしています。一方、投資判断やスピード感が求められる個別事業については株式会社が担います。

この二層構造により、誘客(プロモーション)と受け入れ体制の強化を両輪で進めることができ、地域の価値を最大化する効果が期待できます。

―――ホームページなどで掲げている「すっぴんで歩きたくなるまち」という言葉も印象的です。このフレーズにはどのような思いが込められているのでしょうか。

▲客室一例(京家「桂」ツイン)

俵山温泉は、明治・大正期に建てられた旅館が今も多く残り、温泉街全体がどこか懐かしいノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。そんなまちなみの中で、肩肘張らずに自然体で歩ける――そんな空気感を表現した言葉です。

道ですれ違う人に思わず「こんにちは」と声をかけたくなるような、温かくて人間味あふれるまち。それが「すっぴんで歩きたくなるまち」という表現に込めた想いです。

▲客室一例(泉屋「鐘馗」エコノミーツイン)

―――最後に、今後の展望について教えてください。「まちごと旅館」モデルをどのように発展させ、湯治文化の継承と地域活性を両立させていくお考えですか?

現在の取り組みは、あくまで地域再生への第一歩です。地域の皆さまと丁寧に対話を重ねながら、まち全体の魅力を発信するとともに、足りない機能を少しずつ整備・実装していくことで、より魅力的な地域づくりを進めていきたいと考えています。

湯治は、単に身体の不調を癒すだけでなく、地域住民との交流、新たな発見を通じてリトリートを図る「文化」です。俵山という「まち」にご宿泊いただくことで、かつての旅行者が体験した湯治文化を新しいカタチで体験していただきたいと考えています。

■基本情報

名   称: 俵山まちごと旅館
予約サイト: https://www.chillnn.com/198a114032dfc
Instagram: https://www.instagram.com/tawarayama_machigoto_ryokan/
住   所: 山口県長門市俵山5153番地
アクセス :<お車でお越しの場合>
      [広島方面より]中国自動車道 美祢インターより 約40分
      [九州方面より]中国自動車道 小月インターより 約40分
       山口宇部空港より 約80分
       新山口駅より 約80分
       新下関駅より 約60分
       厚狭駅より  約50分
      <新幹線・電車でお越しの場合>
       JR美祢線「長門湯本駅」経由→俵山方面行きバス(約30分)→「俵山温泉」バス停
       JR山陽本線「小月駅」経由→長門市駅行きバス(約60~70分)→「俵山温泉」バス停
客 室 数: 9室
開 業 日: 2025年10月10日

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