富山県南砺市井波で、職人の工房に通う体験型の宿として知られる「Bed and Craft」が、7棟目となる一棟貸しホテル「OUKA(オウカ)」を2026年4月8日に開業する。
ミシュランキーホテル2024で“セレクテッド”に選ばれた同ブランドにとって、10周年の節目を飾る新展開だ。北陸の工芸を集めた“泊まるギャラリー”という位置づけを掲げ、宿泊を通じて地域の手仕事や産地の魅力をどう次世代へつないでいくのかが注目される。
本記事では、「OUKA」開業の背景やこだわりなどについて、運営を行う株式会社コラレアルチザンジャパンに取材した。
公式サイト:https://bedandcraft.com/
―――10周年という節目の年に、7棟目として「Bed and Craft OUKA」を開業することに込めた狙いや位置づけをお聞かせください。
この10年、私たちは『職人に弟子入りできる宿』として、宿泊者がまちに溶け込む体験を提供してきました。7棟目となる「OUKA」は、その集大成であると同時に、次の10年を見据えた新たな挑戦でもあります。
私たちが目指しているのは、工芸を「鑑賞する対象」から、「暮らしの延長線上にあるもの」へと引き寄せていくことです。これまでの宿が、まちの中に点在する「点」のような存在だったとすれば、OUKAは工芸の魅力をより純度の高い空間で体現する、いわばフラッグシップのような役割を担っています。
―――今回の「Bed and Craft OUKA」で、井波から北陸全体へと視野を広げようとされた背景には、どのようなお考えがあったのでしょうか。
井波は彫刻のまちとして知られていますが、北陸全体に目を向けると、漆や和紙、金工など、本当に多彩な手仕事の文化が息づいています。そうした中で、能登半島地震を経て、地域の文化を守り、次へとつないでいくことの大切さを、あらためて強く感じました。
井波という場所を、単なる一過性の観光地ではなく、「北陸の手仕事の豊かさに触れるための玄関口(ゲートウェイ)」にしたい。OUKAを起点に、宿泊された方の関心が北陸各地の産地へと広がっていく。そんな文化の循環を生み出したいと考えたことが、大きな背景にあります。
―――「Bed and Craft OUKA」を“泊まるギャラリー”と表現されていますが、滞在者にどのような体験や価値を感じてほしいと考えていらっしゃいますか。
ギャラリーと聞くと「触れてはいけないもの」を想像しがちですが、OUKAは違います。朝の光の中で器を使い、職人が手掛けた家具に身を預ける。「工芸品がそこにあるのが当たり前」という贅沢な日常を過ごしていただきたいと思っています。
展示ケース越しでは伝わらない、手触り、重み、温度。一晩を共に過ごすことで、自分の生活にその工芸品が加わった時の豊かさを具体的にイメージできる、体感型のギャラリーを目指しています。
―――手工業デザイナー・大治将典氏との協業や、客室内で工芸品を実際に使い購入にもつながる仕組みを通じて、どのような循環を生み出したいとお考えでしょうか。
手工業デザイナーである大治将典さんの視点が入ることで、作家の個性を生かしつつ、現代のライフスタイルに馴染むプロダクトとして、空間全体に調和が生まれました。
その中で、宿泊者が実際に「使う」、そして「気に入る」、さらに「購入する」という流れをつくることは、職人への直接的な支援にもつながります。宿の中に、「感動」を「購買」という形で作家へ還元する仕組みを組み込むことで、産地が持続し、使い手の暮らしも豊かになる。そうした三方よしの循環を、より太くしていきたいと考えています。
―――最後に、「Bed and Craft OUKA」の開業を通じて、今後Bed and Craftとして地域のものづくりや宿泊体験にどのような未来を描いていらっしゃるのか、ぜひお聞かせください。
私たちは単なる宿泊施設を作っているのではなく、「100年後の井波や北陸の日常を、いかに豊かに残すか」というデザインをしています。
将来的には、旅人がその土地の職人と家族のような関係になり、何度も戻ってくる場所になる。宿泊体験を通じて、地域の工芸が「特別なもの」ではなく「人生に欠かせない相棒」になっていく。そんな、人と地域と工芸が深く結びついた未来を、一歩ずつ形にしていきたいと思っています。
■施設概要
名称:Bed and Craft OUKA(オウカ)
開業日:2026年4月8日
お問合せ:Bed and Craft
住所:富山県南砺市本町3−41
アクセス:JR新高岡駅より車50分/富山空港より車50分
公式サイト:https://bedandcraft.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/bedandcraft/?hl=ja