2025年8月、Karakami HOTELS＆RESORTS株式会社は、熱海市網代にラグジュアリーリゾートブランド「NIPPON RESORT」の第一弾施設「無為自然 -ATAMI-」を開業した。
全18室の客室はいずれも相模湾を望むオーシャンビューと天然温泉露天風呂を備え、静かな環境で過ごせるプライベート感が魅力。館内には、東京のフレンチレストラン『蒼』と連携した「LAT.34°N by 蒼」を併設し、地元・伊東や稲取で水揚げされた魚介を使った料理を提供する。
屋外プールやサウナも備え、自然の景観と地域の食文化を組み合わせた滞在が楽しめる。
本記事では、「無為自然 -ATAMI-」開業の経緯やその魅力などについて、Karakami HOTELS＆RESORTS株式会社に取材を行った。
▷公式HP：https://www.muishizen-atami.com/
―――「NIPPON RESORT」の第一弾として熱海を選ばれた理由や、この地ならではの強みは何でしょうか。
熱海は首都圏から約1時間で訪れられるリゾート地です。伊東・稲取を中心に伊豆半島屈指の好漁場が至近にあり、黒潮の恵みを受けて金目鯛、太刀魚、サバ、サワラ、アオリイカなど、多彩な魚介が一年を通して水揚げされます。
とりわけ「LAT.34°N by 蒼」では、港で締めたばかりの魚を即座に料理へと昇華でき、都市では決して再現できない“鮮度の瞬間”をご堪能いただけます。
―――「デスティネーション・オーベルジュ」という新しいコンセプトは、従来型オーベルジュと比べてどのような点が進化しているとお考えですか。
従来のオーベルジュは「宿泊できるレストラン」という枠組みでしたが、私たちの「デスティネーション・オーベルジュ」は、食事そのものを目的に旅先を選び、滞在全体がその一皿のために設計されている点が進化の核です。
生産地や漁場に隣接する立地により、移動距離と時間を極限まで短縮し、鮮度と調理が一体となった体験を提供できます。さらに、客室や温泉、周辺環境までもが“料理の物語”を補完する舞台として機能します。
―――館内レストラン「LAT.34°N by 蒼」を共同で創り上げるにあたり、峯村シェフと共有したテーマや狙いについてお聞かせください。
これまでホテルの食事は、良くも悪くも“どこも似たり寄ったり”と感じられるという印象や、「あまり期待していない」という声を耳にすることも少なくありませんでした。私たちは、その常識を覆すことを立ち上げ当初からのビジョンとして掲げてきました。
「LAT.34°N by 蒼」は、食べログGoldや全国1位評価を重ねた東京の名店『蒼』の哲学を背景に、伊豆半島の海と大地の恵みを融合させる挑戦です。峯村康資シェフが築いた「素材の声を極限まで引き出し、一皿で自然を語る」世界観を、実際に『蒼』で修行を積んだ料理長・深海が受け継ぎ、漁師や農家との直接的なつながりを活かして、この地ならではの鮮度と物語に昇華しています。
―――「無為自然」という思想を、施設やサービスでどのように体現しているのかお聞かせください。
「無為自然」とは、過剰な装飾や演出を排し、素材や自然の価値を最大限に引き出す思想です。
客室は海や山の景観を遮らない設計とし、温泉は湯の質感をそのまま楽しめるように整えています。館内のBGMは局所的に留め、必要以上に空間を満たさないよう配慮。一部を除き客室にはあえてテレビを置かず、波音や鳥の声、風の音といった自然の“音”を楽しんでいただけます。
サービスも必要なときにだけ寄り添い、ゲストが自らのペースで過ごせる余白を大切にしています。
――― 無為自然-ATAMI-を訪れるゲストに、どのような時間や体験を持ち帰ってほしいとお考えですか。
私たちは、この場所で過ごした時間の中でも、何よりも「食体験」を持ち帰っていただきたいと考えています。
日本には「またあの一皿を食べたいから、あのホテルに行こう」と思える宿は多くありません。無為自然では、それを実現できるレベルのデスティネーション・オーベルジュを目指しています。
景色や宿、豪華な空間ではなく、その場所でしか、その瞬間でしか、その季節でしか味わえない一皿のために足を運ぶ──そんなホテルを心から楽しみ、その記憶を携えて帰っていただければと思います。
■施設概要
【名称】NIPPON RESORT 無為自然 -ATAMI-
【公式HP】 https://www.muishizen-atami.com/
【所在地】 静岡県熱海市網代591-38
【アクセス】 JR熱海駅から車で約20分
【客室数】 18室（ホテル棟15室 / ヴィラ棟3室）
【施設】 レストラン「LAT.34°N by 蒼」 / 屋外プール / プールサイドバー / サウナ