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【取材】大浴場を客室に大胆リノベーション「伊豆リトリート 熱川粋光」全室オーシャンビューに一新

大浴場を客室へ転用する大規模改修を行い、「伊豆リトリート 熱川粋光by 温故知新」が11月1日にリニューアルオープンした。昭和の温泉街を想わせる意匠を残しながら、全16室をオーシャンビューの源泉かけ流し露天風呂付きへ再構成している。

“ノスタルジック・ラグジュアリー”を掲げ、かつての館内素材や備品を再利用するなど、地域の歴史を現在の滞在体験へと結びつける設計が特徴だ。温泉文化の再編集を通じ、旅行スタイルの変化に応える宿として再出発している。

本記事では、今回のリニューアルの背景やこだわりなどについて、運営を担う株式会社温故知新に取材した。

▷公式サイト:https://suiko.by-onko-chishin.com/

―――今回のリニューアルで「大浴場を客室へ」と大胆に再構築されましたが、この発想に至った背景と、実現するうえで特に大切にされたことをお聞かせください。

熱川という地は、面積あたりの温泉櫓の数が日本一を誇り、高度経済成長期には首都圏からのアクセスが良好な温泉地としてにぎわったエリアでした。社員旅行、そして家族旅行で大きな大浴場や宴会場がある旅館が栄えてきた地域の特性があります。

私たちは、そうした歴史の名残をただ壊してしまうのではなく、「未来へと再活用できないか?」と考え、古い場所の新しい活用・リノベーションとしてチャレンジしたのが「大浴場スイートルーム」です。リノベーションならではの個性的な内装と、プライベート感と開放感のある客室に仕上がりました。

▲客室「元大浴場スイート」

―――コンセプトである「ノスタルジック・ラグジュアリー」には、どのような過ごし方や体験をお客様に提供したいという想いが込められているのでしょうか。

このコンセプトには、「古き良きものを大切に守りながら、新たな息吹を吹き込み、生まれ変わらせる」という考え方が込められています。時を経たものの中に宿る豊かさを再発見し、現代の感性で磨き直す、まさに弊社「温故知新」の名に深く関係するコンセプトです。

▲ラウンジバー「汐待ち」
▲バーに飾られたレコード

館内では、熱川が観光地として最も賑わった60〜70年代のデザインを随所に取り入れていますし、レコードやアナログゲーム、当時の写真・ポスターも配しました。アナログなぬくもりや手触り感、時間の積み重ねが生む味わいを感じながら、どこか懐かしく、そして新しい感性に出会える滞在をお届けしたいと考えています。

▲オリジナルのスマートボール
▲ゲームラウンジ「浪間」

―――旧「粋光」で使用されていた素材や備品をアップサイクルして再活用されたとのことですが、特に印象に残っている取り組みやエピソードがあれば教えてください。

レストランの半個室には、旧粋光で使用していた灰皿を再利用したペンダントライトを設えました。旧粋光には、昭和から平成にかけての旅館ならではの食器や灰皿が数多く保存されていましたが、時代の移り変わりとともに日の目を見る機会が少なくなっていました。

▲灰皿を照明にアップサイクル

それらを「何か新しい形で生かせないか」と考え続ける中で、食器や灰皿をペンダントライトとして再生し、空間の一部として息を吹き込むことを思いつきました。単に古いものを飾るのではなく、現代の空間に自然に溶け込むよう、デザインや素材感にもこだわって加工を施しました。

どこか懐かしい風合いを宿した灰皿が、役割を変えて新たな光を放ち、時代を超えて再び注目され、輝く姿を見たとき、当館のコンセプトが体現された瞬間であるなと感じました。

―――地元の方々を招いた内覧会ではどのような反応がありましたか。また、地域とともに歩むうえで今後どのような関わりを考えておられますか。

内覧会では「元大浴場スイート」が想像以上に当初の面影を残していることへの驚きの声が多かったです。洗い場の鏡をそのまま残していたり、床も当時の石畳を生かしたりしているのですが、そんな空間が「客室として利用できる」という点に、皆さまからの関心をお寄せいただきました。

既に、客室では地元作家の器を使用し、ダイニングでは地酒をペアリングに取り入れるなど、地域の魅力を届ける取り組みを始めています。今後はさらにアクティビティの導入や地域イベントとの連携など、滞在したお客様が地域に出向く機会の創出を目指していきたいと考えております。

▲ペアリングイメージ

―――今回のリニューアルを通じて、「伊豆リトリート 熱川粋光」が地域や旅行者にとってどのような存在になっていくことを目指しているのか、お聞かせください。

私たちが目指しているのは、「地域のショーケース」として、ホテルそのものが熱川へいらっしゃる目的地となることです。そして、熱川という地が盛り上がり、注目されるきっかけになるホテルでありたいと考えています。

熱川という土地が持つ本物の魅力、「豊かな湯、海の絶景、そして昭和の温泉街のような情緒」を再発見し、現代の感性で磨き直して届けていきたいと考えています。

■施設概要

施設名:伊豆リトリート 熱川粋光 by 温故知新
所在地:〒413-0302 静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本1271-2
アクセス:熱川駅より徒歩約10分 送迎有(要連絡)
     東京からお越しの場合 東京-伊豆熱川(約2時間15分)
階数:6階
部屋数:全16室
公式サイト:https://suiko.by-onko-chishin.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/okcs_izuretreat_suiko/

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