白馬岩岳・切久保エリアで、40年以上親しまれてきた「ロッジいとう」を再生した宿泊施設「B&D HAKUBA IWATAKE」と、館内レストラン「&Deli」が2026年1月16日に開業した。運営する株式会社ズクトチエは「白馬の隠れた資産を磨き上げる」を起点に、土地の記憶を受け継ぎながら次世代へつなぐ滞在のかたちを提示する。
客室は最大12人まで泊まれるメゾネット型シャレーから2人向けスタジオまで全6タイプ。全室にukaのアメニティを採用し、旅先のルーティンを特別な時間へと変える狙いだ。料理は白馬出身の太田哲雄シェフが監修し、宿泊者以外にも開かれたデリスタイルで地域の日常にも寄り添うという。
本記事では、開業の経緯やこだわりなどについて、株式会社ズクトチエに取材した。
「B&D HAKUBA IWATAKE」公式予約サイト:https://bnd-hakuba.com
「&Deli」公式予約サイト:https://www.tablecheck.com/shops/and-deli/reserve
―――「ロッジいとう」を再生するにあたり、当時の“時間や記憶”をどのように読み解き、B&D HAKUBA IWATAKEの体験設計に落とし込んだのか、象徴的なエピソードや残したかった要素があれば教えてください。
そもそもこのプロジェクトの主目的は、大きく2つありました。
ひとつは、オーナーご夫妻の家と土地を守ること。外部の投資家などに売却せず、地域内に、思い出の残った建物とともに住み続けられる状態をつくることです。
もうひとつは、その昔からの建物を、いまのお客さんにも快適に使っていただきながら、街として永続的に残していくことでした。
長年続けてこられた民宿を廃業すると決めたあと、リタイアされたご夫婦が大きな建物に住み続けるのは、冷暖房費や固定資産税、保険、修繕費などのコスト面でどうしても負担が大きい。一方で、思い出のある土地・建物から離れて暮らしたくない、というお気持ちも大事にしたかったところです。
そこで今回、オーナーご夫妻が永住するのにちょうどいいサイズで、使い勝手の良い空間をフルリフォームしてご提供し、残りの部分を私たちの会社が借り受けて、宿泊事業と飲食事業を行う、というスキームを採用しました。
もちろん「所有ではない」ことによるリスクや資金調達の難易度が上がるなど課題はあります。ただ、それ以上に、もともとの住民の方々が紡いできた生活の歴史を切らないことを大切にしました。ここが一番の“時間や記憶”の読み解き方だったと考えています。
そのうえで、古い民宿のままでは応えきれないニーズ――とりわけ、長期滞在しやすい環境づくりについては妥協しませんでした。部屋のサイズ感、バストイレの独立性、多様な飲食オプションなどに対応するため、間取りは大幅に変更していますし、断熱や防音など、住環境としての快適性も含めてフルリフォームを実施しています。
―――本プロジェクトの出発点である「白馬の隠れた資産を磨き上げる」について、切久保エリアで特に“資産”だと捉えたものは何で、宿泊者にはどんな形で伝わる設計になっていますか。
切久保や新田は、白馬の中でも「民宿発祥の地」と言われる一角です。さらに塩の道(古道)の宿場町としての要素も持っていて、「単なるスキー場のベースタウン」ではない歴史的な深みや景観がある。ここは、まさに“隠れた資産”だと捉えています。
こうしたストーリーを途切れさせないために、昔からある建物の趣は大事にしました。たとえば客室内でも、樹皮の付いた梁をあえて現わしにして、建物が積み重ねてきた時間を目で感じてもらえるように工夫しています。
それに加えて、宿の中で完結させるのではなく、宿泊者が“街を楽しむ”方向へ自然に歩き出せる仕掛けも複数用意しています。たとえば、以下のような仕掛けが挙げられます。
①浴槽を持たない設計:各部屋にはシャワールーム(+共用サウナ)を設けつつ、浴槽はあえて置かない。徒歩30秒ほどの「岩岳の湯」(温泉施設)の無料チケットを提供して、街に出るきっかけにしています。
②基本はB&D/素泊まり中心:飲食も施設内で完結させず、基本はB&Dないし素泊まりのプランに。並行して当社関連施設として(&Deli含め)新規に4軒の飲食施設も開業しました。既存2施設と合わせて、「提灯でライトアップされた宿場町を歩いて、その日の気分で飲食を楽しめる」街の仕掛けをつくっているところです。
③街並みマップの作成:気軽に散歩に出てみたくなる導線として、新たに「街並みマップ」も用意しました。
―――GRAND CHALET/CHALETを「泊まる」だけでなく「集まる」ための空間として設計した背景と、最も想定している滞在シーン(複数世代旅行、グループのスキー滞在等)を教えてください。
共同で事業に参画いただいているアワーカンパニーのメンバーをはじめ、国内のお客さんからも「大人数のグループでワイワイにぎやかに白馬を楽しみたい」という声をよく聞いていました。そういったリクエストに応えたい、というのが出発点です。
施設全体のテーマは「いつも以上の“いつも”」ですが、日常生活だとなかなか一堂に会するのが難しい“いつものメンバー”が、白馬という非日常の場所だから集まれる――そんなシーンをつくりたいと考えました。
想定しているのは、たとえばグループ旅行はもちろん、3世代旅行のように「いつものメンバーだけれど普段なかなか会えない人たち」が、白馬だからこそ集まる、という滞在です。
また、スキーは当然白馬の大きな魅力のひとつですが、いま白馬は「オールシーズンで楽しめるマウンテンリゾート」へ進化しています。グリーン期も、青木湖畔での時間、岩岳山頂の山岳景観とアクティビティ、街の中心地でのアウトドアショップのウィンドショッピングなど、思い思いの過ごし方ができます。
B&Dとしては、そうした通年の白馬の魅力を満喫するための“Base”として機能していきたいと考えています。
―――&Deliを宿泊者以外にも開く狙いは何でしょうか。観光客と地元の方、双方の“日常使い”を成立させるために、提供スタイルや運営面で工夫している点があれば教えてください。
これは2つ目の回答とも重なりますが、白馬・岩岳の本質的な強みは「街の面白さ」だと捉えています。これを最大限に引き出すには、泊食分離は必須、という考えです。
今回、白馬出身の太田哲雄シェフ(アマゾンカカオ)にプロデュースしてもらったロティサリーチキンやピザ、デリなどを提供しますが、すべてイートインでもテイクアウトでも利用できるように準備しています。
他の宿泊施設を利用されている方や、地元の方にもテイクアウトしていただくことで、宿泊客だけでなく幅広い方に「いつも以上の“いつも”」を味わっていただきたいところです。
また、白馬エリアはグリーン期の来場人数が増えているとはいえ、閑散期はどうしてもあります。飲食店としては、その時期も含めて安定的に支えてくださる地元の方に愛され続けることが必須です。
そのために、繰り返し使っていただきやすいよう、ローカル割なども積極的に活用していく予定です。
―――開業を迎えたいま、B&D HAKUBA IWATAKEと&Deliを通じて、宿泊者や地域の方にどんな時間が“残っていく”ことを願っていますか。また、その実現に向けて、運営の中で今後とくに大切にしていきたい姿勢や取り組みがあれば教えてください。
今回の取り組みだけでなく、8年前から続けている岩岳の街並み活性化の取り組みに共通する狙いとして、いちばん大事にしているのは、次世代・次々世代の地元プレーヤーが、外部資本に土地や建物を売却することなく、白馬・岩岳地区の優れた資産をフルに活用しながら、観光領域で主体として活躍し続けられる街づくりをすることです。
地域全体として、優れた街並みの中に存在する建物を保存し、アップグレードしながら、訪れた観光客が、街並みの歴史的重みやユニークな景観、地元の人の生活の匂い、そして飲食・物販・アクティビティなど多様な観光コンテンツを楽しみ、「また訪れてみたい」と思ってもらえる。
そうした街づくりを、地元主導で頑張って続けていきたいと考えています。
そのために運営で大切にしたいのは、単体の施設を成功させることだけではなく、街全体の価値が積み上がっていくような視点を持ち続けることです。建物や景観の“時間”を守りながら、訪れる人が自然に街へ出て、関わりが生まれる導線をつくり続けることを重視していきます。
■「B&D HAKUBA IWATAKE」概要
住所:長野県北安曇郡白馬村北城12130-2
交通:JR大糸線白馬駅より車で15分
開業日:2026年1月16日(金)
営業期間:通年営業 ※季節により休館日あり
駐車場:15台
URL(公式予約サイト):https://bnd-hakuba.com
インスタグラムアカウント:https://www.instagram.com/bnd_hakuba_iwatake/
事業運営:株式会社ズクトチエ
■「&Deli」概要
住所:長野県北安曇郡白馬村北城12130-2
交通:JR大糸線白馬駅より車で15分
開業日:2026年1月16日(金)
営業期間:通年営業 ※季節により定休日あり
営業時間:15:00~21:00(20:30 L.O.) ※季節により時間変更あり
席数:35席
駐車場:15台(B&D HAKUBA IWATAKE と共用)
TableCheck(公式予約サイト):https://www.tablecheck.com/shops/and-deli/reserve
事業運営:株式会社ズクトチエ