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【取材】“サ旅”終着の宿「SAUNA&CURRY URI 京丹後」開業

京丹後・久美浜の山あいに、三棟すべてに専用サウナを備えた古民家ホテル「SAUNA&CURRY URI 京丹後」がオープンした。蔵や納屋を改装したプライベートサウナと、水着着用で男女一緒に楽しめる貸切空間が特徴だ。

完全無人の一棟貸しで、タオルや水着などもそろえた「手ぶらOK」の仕組みとした。年末年始に向けサウナ・温泉ニーズが高まるなか、京阪神から車で約2時間半の山里に、自然とスパイスカレーでととのえる“サ旅拠点”が生まれた。12月14〜15日には三棟を開放する体験イベントも予定されている。

本記事では、開業の経緯や施設のこだわりなどについて、運営を担う合同会社NUTMEG代表の田中友規氏に取材した。

▷公式サイト:https://saunauri.com/kyotango/

――久美浜・神谷エリアを2拠点目として選ばれた理由と、この土地ならではの滞在価値についてお聞かせください。

田中さん:
2拠点目として京丹後を選ぶうえで、いちばん大事にしたのは「東大阪で掲げたコンセプトをそのまま延長しつつ、環境そのものにもっと助けてもらう」という発想でした。

1号店の東大阪では、「ストレスのない滞在」や「誰にも会わないサウナ旅」「食べるサウナ」といった考え方を、主にオペレーションの仕組みや設計によって実現してきました。一方で京丹後では、その軸はぶらさずに、「そのコンセプトにいちばん自然に寄り添ってくれる環境はどこか」という問いに向き合った結果として、久美浜・神谷という場所にたどり着いています。

久美浜町神谷は、久美浜湾と小さな山々に囲まれた谷あいの集落で、もともと稲作を中心に暮らしが営まれてきた場所です。古い土蔵や納屋が点在し、湧き水の音や鳥のさえずり、谷を抜ける風が日常に溶け込んでいます。こうした環境に身を置いていると、こちらが何か特別なことをしようとしなくても、自然と呼吸が深くなっていく感覚があります。

私自身、京丹後エリアには以前からよく通っており、久美浜は仕事の合間にふらっと立ち寄って夕焼けを眺める「心の避難場所」のような存在でした。そこにたまたま出会ったのが、今回の元米農家の古民家群です。梁や土壁に時間の蓄積を感じると同時に、「ここにサウナがあったら、きっと谷の風そのものがごちそうになる」と直感しました。

ゲストの方の視点でいうと、観光スポットをいくつも巡るというより、「サウナに入る → 外気浴で谷の風を浴びる → 古民家でゆっくり食事をとる → 朝に体にやさしい朝食で目を覚ます」という一日のリズムを、ゆっくり繰り返すような滞在になります。予定をぎゅうぎゅうに詰めなくても、「何もしないこと」が自然と満たされていく。その感覚を届けるには、この神谷という土地がいちばんしっくりきました。

――三棟それぞれに異なるサウナ体験を設計された背景と、特にこだわられたポイントを教えていただけますか。

▲ 栄の間

田中さん:
三棟三様のサウナ体験にしたのは、「サウナの好みは人の数だけある」という感覚を、空間としてちゃんと受け止めたかったからです。温度や広さだけでなく、「暗いほうが落ち着くのか」「開放的な外気浴が好きか」「寝転んで入りたいか」など、細かな好みを三つの棟それぞれに振り分けています。

母屋「栄の間」は、築100年の土蔵を改装したメイン棟です。本来6名以上入れるボリュームをあえて2名用に割り切り、約170cmのフラットな寝転びスペースでセルフロウリュを楽しめるようにしました。外気浴テラスには約8℃まで冷やせる水風呂を設置し、谷を抜ける風と湧き水の音を感じながら、ととのいの余韻をじっくり味わえるようにしています。ふたりで静かに、ととのいと会話を行ったり来たりしながら過ごしたい方に向いている棟です。

▲ 栄の間
▲ 竹の間

「竹の間」は、書院造の平屋に「瞑想サウナ」を組み合わせた棟です。黒一色でまとめた小さなサウナ室は、洞窟のような暗がりと熱に身を委ねることで、自然と感覚が内側に向かうような体験を意識しました。サウナ・水風呂・内気浴リビング・寝室がワンフロアでつながる動線にこだわり、「自宅の延長線上で、ととのいと休息を何度でも往復できること」を大切にしています。サウナビギナーの方や、サウナ好き同士の女子旅などに相性の良い棟です。

「八重の間」は、納屋テラスとバレルサウナを備えた4名用の棟です。農作業小屋だった納屋をそのまま外気浴スペースとして活かし、木の匂いと外気が混ざり合う少しワイルドな雰囲気の中で、ととのいを楽しめるようにしています。テラスと屋内リビングの行き来がしやすい間取りにしているので、サウナでしっかり温まったあと、テラスで風に当たりながら談笑し、室内で一息つく――という流れを、仲間同士で何度でも繰り返していただけます。グループでの合宿的なサウナ旅にぴったりの棟です。

▲ 八重の間

ゲストの方には、「ふたりで静かに整いたいなら栄の間」「サウナビギナーやサウナ女子旅なら、住まいに近い感覚で使える竹の間」「サウナ仲間と賑やかに楽しみたいなら八重の間」といった形で、目的やメンバー構成に合わせて、棟ごとに楽しみ方を選んでいただければと思っています。

――築100年の蔵サウナや納屋テラスなど、既存建物の歴史を生かしたリノベーションで大切にされた考え方を伺えますか。

田中さん:
リノベーションの際にいちばん大切にしたのは、「古民家を『見せ物』にしない」ということでした。観光用のセットのようにきれいに作り替えるのではなく、ここで本当に暮らしがあったことを感じられる状態のまま、サウナ付きの滞在にアップデートする、というイメージです。

たとえば「栄の間」の蔵サウナでは、土蔵の構造やスケール感をできるだけ残しつつ、断熱や防水・安全性など、必要な部分だけを現代基準に合わせています。サウナ室を2名仕様に割り切ることで、「余白としての広さ」を贅沢さに変え、「蔵の中にこぢんまりした箱を入れる」のではなく「蔵全体がサウナになる」感覚を目指しました。外気浴テラスの高さや位置も、谷からの風や湧き水の音が自然に届くよう、細かく調整しています。

▲ 竹山から吹き下ろす風が心地いい外気浴スペース(栄の間)

「八重の間」の納屋テラスでは、壁材や梁の経年変化、農機具が置かれていた痕跡などをあえて消していません。かつて籾殻を保管していた縦穴のようなスペースも、「ただ埋めてしまう」のではなく、夏も冬もひんやりとした空気がたまる天然のクールスポットとして活かしています。サウナでしっかり温まった後、この小さな穴倉に体を預けると、長い時間をかけて呼吸してきた建物の中に自分が溶け込んでいくような、不思議な静けさを感じていただけると思います。

ゲストの方の目線では、単に「古民家風のインテリアを楽しむ」というより、柱の傷や煤の跡、納屋の粗さも含めて、「この建物に流れてきた時間そのものに身を置く」体験に近いかもしれません。その時間のレイヤーの中に、現代的なサウナや朝食、ワークスペースが少しずつ差し込まれている――そうしたバランス感覚を大事にしました。

――施設の特徴でもある特製スパイスカレーや中国式朝食は、京丹後での滞在体験をどのように高める存在として設計されたのか、その狙いや工夫をお聞かせください。

田中さん:
URIでは、「サウナで整う一日」をデザインするうえで、フードの役割をとても重視しています。特製スパイスカレーや中国式の朝ごはんは、単なる付帯サービスではなく、「サウナのために設計した食事」です。

サウナに入ると発汗によってミネラルや水分が失われますが、同時に感覚が研ぎ澄まされて、いつも以上に香りや味に敏感になります。私はシンガポール料理研究家としてスパイス料理を学んできた背景があるほか、日本の漬物や発酵食品の研究も続けており、日本の発酵文化を海外に紹介する活動も行ってきました。そうした視点をベースに、「サウナ後の体が自然に欲しがる味とは何か」「翌朝の体にどんなものを返してあげたいか」を考えながら、カレーや朝食の構成にさりげなく反映しています。

朝食の中華粥セットでは、腸をいたわるスープや、発酵の考え方を取り入れた副菜を組み合わせ、一晩サウナと睡眠でリセットされた体に、やさしく栄養を戻していくイメージで設計しています。カレーの副菜や朝食のおかずの一部にも、発酵由来の旨味や酸味を織り交ぜていて、「しっかり食べたのに胃が重くならない」「翌朝の目覚めが軽い」と感じていただけることを目標にしています。

また、特製スパイスカレーは各棟の専用冷凍庫から24時間いつでもキャッシュレスで購入でき、「今食べたい」と感じたタイミングを逃さずにすぐ温めて食べられます。ゲストの方の目線で言うと、サウナ前に軽く食べておく、サウナ後の「ごほうび」としてしっかり一皿楽しむ、といった具合に、一泊二日の中で何度かに分けて味わえる自由さがあります。一般的なコース料理ではなく、自分なりのサウナルーティンと発酵・スパイスを組み合わせていけることが、URIならではの「食べるサウナ」体験だと思っています。

――最後に、SAUNA&CURRY URI 京丹後を通じて、今後どのような「サウナ旅」の体験価値を地域に広げていきたいとお考えでしょうか。

田中さん:
URI京丹後で目指しているのは、「サウナ旅の終着地」というポジションです。京丹後エリアにはすでに魅力的なサウナ施設や温泉がいくつもあり、その一つひとつを巡った一日の最後に、「誰にも会わず、自分たちのペースで余韻を味わえる場所」があると、旅全体の記憶の残り方が変わってくると感じています。

私たちは、地域のサウナ・温泉・食・自然を競合として見るのではなく、「一本の旅の線でつなぐ存在」になりたいと考えています。たとえば、ゲストの方には、昼間は海沿いのサウナや温泉を巡り、夕方は久美浜湾の夕焼けを眺め、夜はURIの古民家サウナでしっかりととのい、スパイスカレーと体にやさしい朝食で一日と翌朝をゆっくり締めくくる――そんなリズムで「サウナ旅」を組み立てていただけたら嬉しいです。

もう一つの視点は、「サウナ付きの暮らし」の実験場としての役割です。東大阪のプライベートサウナ一棟貸しと京丹後の古民家サウナという二つの拠点を通じて、いずれはタイニーハウス的なスケールのサウナ付き住居や、小さな小屋が点在するような「サウナのある村」を実現したいという構想があります。そのプロトタイプとしてURI京丹後を位置づけています。

地域側から見ると、古民家を解体して駐車場にする、という選択肢だけでなく、「サウナと食の拠点として再生する」という可能性を示すことができれば、長期的なまち・むらづくりにもつながっていくはずです。サウナ好きの方々が何度も訪れ、少しずつ地域に愛着を持ってくださることで、生産者や近隣の施設ともゆるやかな交流が生まれていく。その循環を育てていきたいと考えています。

■施設概要

施設名:SAUNA&CURRY URI 京丹後(サウナアンドカレー ウリ きょうたんご)
所在地:〒629-3416 京都府京丹後市久美浜町神谷491
棟数・客室構成(すべて一棟貸し)
母屋「栄の間」:蔵付き/約130㎡/2名まで
別邸「竹の間」:平屋1フロア/2名まで
別邸「八重の間」:2階建て/4名まで

チェックイン:15:00〜
チェックアウト:10:00

設備・アメニティ(一例)
全棟:Wi-Fi、冷凍冷蔵庫、電子レンジ、湯沸かしポット、サウナ用アロマオイル
アメニティ:バスタオル/ハンドタオル/水着(フリーサイズ)/サウナハット/館内着/サンダル/歯ブラシ/シャンプー/コンディショナー/ボディソープ/ドライヤーほか

「八重の間」のみ:キッチン(IHコンロ、鍋・フライパン・包丁・まな板・食器類)

アクセス
車:京都市内・大阪市内から約2時間15〜30分
電車:京都駅から特急で約2時間 → 豊岡駅から車で約20分
京都丹後鉄道「久美浜」駅から車で約9分

駐車場:各棟1台分の無料駐車場あり(2台以上で来訪の場合は事前連絡が必要)。

予約方法:公式サイト「RESERVATION」ページ、またはRakuten oyado などより。
公式サイト:https://saunauri.com/kyotango/

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