石川県小松市に、町家を改装した分散型ホテル「Komado(コマド)」が2025年10月に開業した。
加賀藩の城下町として知られる小松は、今もものづくりや町衆文化が息づく地域。Komadoは、そうした暮らしや文化を、滞在を通して感じられる場として誕生した。全3室の客室は、それぞれに異なる景色を楽しめる造りで、館内には地元の工芸品やアートを配している。
カフェ&ショップも併設し、地元茶舗の棒茶や九谷焼などの生活工芸に触れられるのも魅力だ。町家を活かした宿として、地域の新たな観光拠点を目指している。
本記事では、Komadoブランド立ち上げの経緯や施設のこだわりなどについて、運営を担うNEWLOCALグループの株式会社小松企画に取材した。
▷公式サイト:https://nipponiakomatsu-komado.com
―――町家を改装した分散型ホテルという形式を選ばれた理由と、その形が地域にもたらす効果について、どのようにお考えでしょうか。
小松の町家を保全・活用し、まち全体を一つのホテルに見立てることで、持続可能なまちづくりに貢献したいと考えています。この形式を採ることで、空き家再生を通じて景観を守りつつ、宿泊に関わる消費がまち全体に広がる仕組みになります。
ゲストは滞在を通してまちの暮らしを体験し、地域住民との交流をきっかけに関係人口が生まれていく。Komadoは、そんな「小松の風土を体感できるまちの玄関口」を目指しています。
―――老朽化が進む町家を再生する際に、建物の保存と快適性の両立で特に工夫された点や、難しかった点を教えてください。
「伝統の保存と快適性の両立」が鍵でした。梁や吹き抜けなど、町家ならではの意匠はできる限り残しながら、断熱性・遮音性を高める改修を施して現代的な快適性を加えています。水回りや空調設備も一新しました。
一方で、古い建物ならではの構造的な課題も多く、現場では地元の職人さんたちと密に連携しながら、一棟ごとの個性やポテンシャルを引き出す柔軟な対応が求められました。
―――客室や共用部に採用された工芸品・アート作品はどのような基準で選定されたのでしょうか?地元作家との協働のエピソードがあれば伺いたいです。
空間のキュレーションは、金沢市・犀川沿いでアンティークショップ「SKLO room accessories」を営む塚本美樹さんにお願いしています。塚本さんは、「小松に縁のある素材や作家との出会いをたどる旅のような選定だった」とお話しされていました。
たとえば、小松出身の写真家・小雪さんの作品を客室に掲示しており、ゲストが部屋の中でも地域の空気を感じ取れるような空間づくりを意識しています。
―――まちに開かれたカフェ&ショップを通じて、地域住民や観光客との関係性をどのように築いていきたいと考えていますか。
カフェ&ショップは「多様な人が交わる場」の核です。地元の方々と観光客が自然に交流できる関係性を目指し、地元食材を使ったメニューや工芸品の販売のほか、地域イベントも定期的に開催していく予定です。
カフェをまちの情報が集まるサードプレイスとして機能させ、住民には「まちの新しい日常」を、観光客には「また来たい」と思えるような人と人とのつながりを生み出したいと考えています。
―――今後のKomadoブランドや、小松のまちづくりにおける展開ビジョンについてお聞かせください。
Komadoは、小松のまちづくりを支えるプラットフォームとして展開していきます。今後は、市内の空き家や遊休施設を順次再生し、分散型ホテルとしての規模を拡大。賑わいを「点」から「面」へと広げていく計画です。
また、ガストロノミーツーリズムなど、小松が持つ地域資源を編集・発信しながら、独自のブランド力を高めていきたいと考えています。
■施設概要
ホテル名:Komado ベンガラ
住所:〒923-0926 石川県小松市龍助町29-1
アクセス:JR小松駅徒歩7分(小松駅:金沢駅より新幹線で約10分 / 電車で約30分 / 自動車で約40分)
客室数:3室
公式サイト:https://nipponiakomatsu-komado.com
公式Instagram:https://www.instagram.com/nipponia_komado