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震災から7年の福島、沿岸部の被災地で新ホテル開業

2011年3月11日に発生した東日本大震災に端を発した津波や原発事故で甚大な被害を被った福島県。観光客数は当初の落ち込みから全県では震災前の9割にまで回復している。福島県の観光の現状と課題を新規ホテル開業と合わせて考えた。

震災以前のレベルまで回復してきた福島県の観光客数
2011年3月11日に起きた東日本大震災は、東北地方を中心とした東日本各地に大きな被害もたらした。特に福島県は、その後に起こった「福島第一原子力発電所」の事故もあり、今なお故郷に帰ることができない人が数多く存在している。また、福島県は観光面でも東日本大震災とその後の風評被害により大きな打撃を受けた。

(福島県観光客数の推移)

出典:福島県

上記のグラフの通り、福島県の発表によると、福島県全体の観光客数は震災発生前の2010年は5,717万9,069人を記録していた。ところが震災が起こった2011年には3,521万1,010人にまで大きく落ち込んだ。その後、4,445万9,024人(2012年)、4,831万4,763人(2013年)、4,689万2,918人(2014年)、5,031万3,090人(2015年)と徐々に回復基調を示し、2016年には5,276万3,904人と震災前の9割程度にまで回復している。

しかし、地方別に詳しく見てみると少し違う構図が浮かび上がってくる。

観光客数の回復が遅れている沿岸「浜通り」地方
福島県全体では順調に観光客が回復しているが、福島県を地方ごとに細かく分けて見てみると、観光客が回復している地域と回復していない地域とにはっきり分かれる。福島県は海沿いから内陸に「浜通り」「中通り」「会津」と3地方に分けるのが一般的だ。

この3つの地方のうち県央部に位置する「中通り」と県西部「会津」の観光客の回復は順調だ。「中通り」の2016年の観光客数は2,301万1,000人を数え、これは震災前の2010年比で約104%だった。また、2016年に「会津」を訪れた観光客は1,907万6,000人を記録し、2010年比で約101%と両地域ともに震災前の観光客数を超えている。

対して、震災前の水準まで観光客が戻っていないのが沿岸部の「浜通り」である。「浜通り」は、周知の通り津波と福島第一原発の二重被害が起こった震災関連の被害が甚大な地域である。「浜通り」地域の2016年の観光客数は1,067万7,000人だったが、2010年比で約66%程度にとどまっている。実数で比較しても「浜通り」地域は、ほかの2地域に1,000万人前後の差をつけられており、観光客数の回復に関しては取り残された地域になってしまっているのである。

復興の受け皿となるか、被災地周辺で進む新規ホテル開業
このように、県全体としては観光客数が回復している中で沿岸の「浜通り」地方だけは震災前の水準に戻っていないのが現実だ。しかし、「浜通り」にも明るい話題が提供されている。
それは、福島第一原発が立地し、現在も一部地域が帰還困難区域、居住制限区域などに指定されている双葉郡での2軒の2018年の新規ホテル開業である。

福島第一原発から15-20kmほど南の位置にある楢葉町で建設が計画されているのは「楢葉ホテル」だ。2018年夏の開業を予定している楢葉ホテルは、鉄骨4階建ての客室数207を予定している。運営するのは神奈川県箱根町の旅館「一の湯」の関連会社で、同社によるとレストラン、コンビニに加えて温泉も採掘しビジネス利用のほか、観光目的にも耐えられる施設にする予定という。加えて従業員も30人ほど採用する予定だ。

また、震災時に町全域が緊急時避難準備区域に指定され原発事故対応拠点となった「Jビレッジ」がある広野町で建設が予定されているのは「ハタゴイン福島広野(仮称)」だ。同ホテルは鉄骨7階建てで222室の客室を予定している。大浴場やレストランのほか、多目的ホールを備える宿泊施設になる。開業は2018年秋を予定している。

(新規ホテル予定地)

出典:メトロエンジンリサーチ

メトロエンジンリサーチによると、福島県内で新規開業予定のホテルは上記の2ホテルのみだ。
被災地でのホテル開業は、観光客や復興工事のための作業員やボランティアなどを受け入れるための受け皿となりうるだけでなく、過疎化し人口が流出する中で現地に雇用を創出することにもなる。

福島の被災沿岸地域でのホテルの稼働は、福島の復興にも大きく影響するものであり、数十年続くと言われる原発事故の処理と除染作業とともに長期的な観点で注目していきたい。

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