株式会社宿研は、物価高騰時代における旅行計画や宿泊先選びに関する消費者行動を明らかにするため、2025年夏に国内旅行を終えたばかりの1,000人を対象に調査を実施した。調査の目的は、旅行者が実際にどのような基準で宿泊施設を探し、選んでいるかを把握することである。近年はSNSに加え、生成AIの活用が宿泊先選びの新しい手段として広がっており、旅行者の意思決定過程に変化が生じている。
調査では、旅行や宿泊先探しにおいて生成AIを活用した人が全体の32.6%に上ることが明らかとなった。宿泊施設のタイプや価格帯によっても利用傾向に差が見られ、民泊・ゲストハウスでは58.5%、リゾートホテルでは45.2%と高い活用率を示した。一方で、ビジネスホテル利用者の活用率は28.9%にとどまり、利用目的の違いが反映された結果となった。この生成AIを活用した検索行動の流れは一時的なブームではなく、宿泊施設にとって「AIに推薦される対策」が今後重要な集客施策になる可能性を示唆している。
旅行形態では、家族連れ(34.3%)、夫婦・カップル(25.2%)に続き、ひとり旅が20.1%を占めるなど、個人旅行の定着が確認された。宿泊施設タイプでは、体験型の旅館(26.4%)やリゾートホテル(24.9%)を抑え、ビジネスホテルが26.5%で最も多く利用された。観光やレジャー目的でもビジネスホテルが選ばれており、効率性とコスト意識の高まりが背景にある。
宿泊先を決める際の基準については、価格帯の上昇に伴い重視点が変化する傾向が見られた。低価格帯ではアクセスや割引などの機能性が重視されるのに対し、中価格帯では料理、高価格帯では客室の質や静けさ、そして思い出や記念性といった情緒的価値が重視される傾向にある。また、候補から外された理由の上位は「価格に見合わない」(20.5%)であり、旅行者は“高いか安いか”ではなく「価格に納得できる理由があるか」を無意識に見定めている。
さらに、クチコミ確認の行動にも特徴が見られた。民泊・ゲストハウスの利用者はオーナー返信の確認率が78.0%と最も高く、悪いクチコミへの対応を通じて誠実さを見極めようとする傾向が強い。一方で、ビジネスホテル利用者は確認率が低く、立地や価格など実用性を重視する傾向が顕著であった。本調査結果をまとめたレポートでは、その定量データから導かれた旅行者インサイトを紹介し、宿泊施設が“選ばれる理由”をつくるための実践的なヒントを提示している。