
株式会社リクルートのじゃらんリサーチセンターは、観光業従事者を対象に「観光業界課題調査2025」を実施し、その結果を発表した。本調査は、観光業界の現状と課題を把握することを目的に行われたもので、観光事業者や関連団体などが回答したものである。調査結果では、観光産業における最も大きな課題として「働き手不足」が挙げられ、48.6%がこれを指摘した。また、「観光地の受入環境整備(二次交通・インフラなど)」が47.3%、「専門スキルを持つ人材の採用・育成の難しさ」が41.3%と続き、人材と環境の両面で課題が顕在化していることが明らかになった。
働き手不足の背景には、賃金水準の低さや労働時間の長さといった労働条件の問題があることが示された。調査では、37.5%が「賃金水準が他業種に比べて低い」と回答し、35.4%が「専門スキルを持つ人材を育成する体制が不十分」と答えた。また、観光マネジメントや語学対応、デジタルマーケティングなどの専門スキルを持つ人材が不足しており、業務の多様化・高度化に人材育成が追いついていない現状が浮き彫りとなった。
一方で、観光業に従事する人々の多くは、地域や観光業全体に対して強い愛着を持っていることも明らかになった。調査では、「地域や観光業に対する誇りや愛着」を感じている人が多数を占めたが、自身の勤務先や日々の業務に対する推奨意向は低い傾向にあった。地域や業界全体への好意と職場満足度との間にギャップが存在することが示され、この点が今後の人材定着の課題であると指摘されている。
じゃらんリサーチセンターは、これらの調査結果を踏まえ、観光業界の持続的な発展に向けた3つの方向性を提示している。1つ目は「人材の裾野を広げる仕組みづくり」であり、多様な人材が参入できる柔軟な働き方や副業人材の活用を推進するものである。2つ目は「スキルとキャリアを育む仕組みづくり」で、観光協会やDMOが中心となって接客・語学・デジタル活用などの研修を体系化し、スキルアップを支援することを目指している。3つ目は「地域愛を働きがいにつなげる環境づくり」であり、従業員が自分の仕事を地域貢献と結びつけて実感できるようにするための取り組みや、地域に貢献した人材を評価・表彰する制度の導入が提案されている。
今回の調査では、観光業の発展において「人材確保」と「人材育成」、そして「働きがいの向上」が重要であることが改めて示された。じゃらんリサーチセンターは、調査を通じて得られた知見を今後の政策提言や産学官連携の推進に活かしていくとしている。
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