岐阜県白川村では、昨秋開設したオーバーツーリズム対策総合サイト「白川郷すんなり旅ガイド シラカワ・ゴーイング(Shirakawa-Going)」に関するアンケート調査を2024年12月から2025年1月にかけて実施した。その結果、同サイトが旅行者の行動変容を促す有効なツールであることが明らかとなった。
白川郷では特定の週末や連休に交通渋滞が発生している。本調査では、70%の旅行者がこの状況を認識しており、88%が「混雑日を避ける」または「朝早い時間をずらす」意向を示した。これにより、「シラカワ・ゴーイング」の混雑予測機能が旅行者の行動変容を促し、混雑回避につながる可能性が示された。また、92%の旅行者が今後の訪問時に同サイトを参考にしたいと回答しており、事前の情報収集ツールとしての有用性がうかがえる。
白川郷では、世界遺産集落と村民の暮らしを守るために独自の「白川郷ルール」を設けている。しかし、今回の調査では訪問前に何らかのルールを認知していたのは約半数にとどまり、多くの旅行者が現地で初めて知るという課題が浮き彫りとなった。特に「ゴミの持ち帰り」や「火気厳禁」「私有地への進入禁止」に関しては約5割の認知度があったが、「ドローン禁止」に関する認知度は約3割にとどまった。さらに、4人に1人はルールを全く知らないと回答しており、さらなる周知活動が求められる。
また、白川村が推進する「白川郷レスポンシブル・ツーリズム」については、97%が「白川郷の美しい景観を100年先まで残したい」と回答し、高い共感が示された。観光と地域の調和を重視する姿勢が評価されており、持続可能な観光の実現に向けた取り組みが今後も重要となる。
調査では、旅行者からの具体的な声も集まった。「混雑情報がリアルタイムに分かりやすく入手でき、事前計画にも現地でも役立つ」との意見や、「外国人観光客にも使いやすい設計で、海外(特にアジア)に向けて積極的に広めてほしい」との要望があった。また、「世界遺産であるがゆえに、住んでいる人がいることへの配慮が希薄になりがち。謙虚な気持ちで敬意をもって訪れるためにも、必要なサイトだ」といった声も寄せられた。
今後の課題としては、さらなる交通混雑対策の強化、白川郷ルールの認知向上、そして雪見インバウンドと大雪への対応が挙げられる。特に雪見目的の訪日外国人観光客の急増に伴い、記録的な降雪時の情報発信が求められている。駐車場の営業開始遅延時に観光客へ迅速かつ効果的に情報を伝える方法や、警報級の大雪時に来村を控えてもらうための適切な発信手段の検討が必要である。
今回の調査により、「シラカワ・ゴーイング」が混雑回避に向けた行動変容を促す可能性を持つことが確認された。同時に、レスポンシブル・ツーリズムの推進が旅行者と地域双方に良い影響をもたらし、持続可能な観光の実現に貢献していることも明らかとなった。今後も残る課題に取り組みながら、リアルタイム情報の充実、白川郷ルールの周知強化、レスポンシブル・ツーリズムのさらなる浸透を進め、観光と地域住民の暮らしの調和を図っていく。白川村は、自然・暮らし・観光の調和を大切にしながら、訪れる旅行者に忘れられない体験を提供していく。そして、責任ある旅行者がその調和の一部となることで、持続可能な観光の発展を目指していく。