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訪日数3年連続、No.1ー訪日中国人客とホテルの課題

2017年に最も訪日客数が多かった国は3年連続で中国だった。実に735万人もの中国人が日本を訪れている。日本の観光業に与えるインパクトは大きく、中国人需要をうまく取り込めるか否かはホテル経営を考える上でも、非常に重要なファクターになっている。
2017年の訪日中国人のトレンドを検証し、ホテルの課題を考える。

 
2017年も訪日数トップは中国
日本政府観光局(JNTO)から発表された統計資料によると、2017年に最も訪日外客数が多かったのは中国だった。2017年に日本を訪れた中国人は735万人で、前年2016年の637万人から約100万人増えた計算だ。昨年比40%増と大幅に増加し、トップに肉薄した韓国が2位で、714万人、3位は台湾の456万人と、上位3カ国を東アジアの国々が独占した格好。これに4位の香港、223万人を足すと、これら東アジアの4か国(地域)で全体の訪日客の4分の3以上を占めた。
 

訪日中国人観光客数

出展:JNTO訪日外客統計

 
中国は2015年から3年連続で訪日外客数が最も多く、上記グラフの通り、2015年は499万人、2016年は637万人、そして2017年は先述したように735万人となっている。元々の母数が大きいにも関わらず、毎年高い伸び率を示しており、2017年は前年からの伸び率が15.4%を記録した。数字を見る限り、訪日中国人によるインバウンド需要は変わらず堅調のようだ。
 
また、訪日中国人は平均宿泊数に関して、韓国(4.3泊)や台湾(6.7泊)などと短期滞在が一般的な他の東アジア諸国と異なり、10.9泊と比較的長い滞在となっている。旅行消費額も一人当たり23万円と全訪日客の平均の15.4万円を大幅に上回っており、その分市場に与えるインパクトはその訪日数以上に大きくなっている。
 
個人旅行客(FIT)化と同伴旅行
2017年の訪日中国人の増加を押し上げる要因となったのは、2017年5 月より適用された数次ビザの発給開始などのビザの要件緩和に伴い個人旅行(FIT)需要が高まったことが第一に挙げられる。
また、クルーズ船寄港数の増加が中国人訪日客の増加を後押しした。クルーズ船は現在中国で一種のブームとなっており、爆買いに象徴される「モノ消費」から体験型の「コト消費」に関心が移ってきている象徴的な現象である。日本と同様に旅行において同伴者を求めることが多い中国だが、特にクルーズ船では学生グループや何世帯もの大家族で訪日しているようなケースも目につく。

訪日中国人の同行者割合


 

出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査

 
上記のグラフの通り、直近(2017年10-12月)の訪日中国人の同行者割合の調査結果は、「家族・親族」が25%、「友人」が22%、「夫婦・パートナー」が19%、「職場の同僚」が18%、一人旅を示す「自分ひとり」は17%だった。全体の8割強が同行者付きの滞在であり、一人旅の割合が半分近くを占める欧米の訪日客とは対照的である。
 
ゴールデンルートに集中も地方拡散へ
訪日中国人が出入国に利用した空港は成田国際空港、東京国際空港(羽田空港)の首都圏にある2空港と、関西国際空港が突出して多い。
 
2017年10-12月の調査では、訪日中国人の25.0%が成田国際空港、16.4%が羽田空港から入国し、首都圏2空港合わせた利用率は4割を上回った。また、関西国際空港から入国したのは32.6%だった。首都圏2空港と関西国際空港の3空港で、全体の実に7割以上の訪日中国人が入国しているというわけだ。
 
この割合は、訪日客の平均値と大きな差異はなく、首都圏や大阪、京都などのいわゆるゴールデンルートに集中している訪日観光客の課題がそのまま訪日中国人にも当てはまる。
 
ただし、一つの注目は、中部国際空港の利用が訪日客の平均が4.0%なのに対して、7.7%と倍近い点であり、日本を訪れる中国人は団体旅行(GIT)から個人旅行(FIT)へと推移し始め、徐々に増加するリピーターが首都圏や大阪・京都から地方観光スポットへと拡散してきていることを示している。
 
少ない宿泊料金の消費割合
拡大を続ける中国人観光客市場であるが、ホテルが直面している課題として、訪日中国人の旅行支出における宿泊料金の割合の小ささが挙げられる。
 

訪日中国人の旅行支出割合

出展:訪日外国人消費動向調査

 
上記は訪日中国人の旅行支出の割合を示すグラフだが、宿泊料金の占める割合が21%と、全訪日客の平均である28%を大きく下回った。以前より爆買いは目立たなくなったとは言え、52%と買い物代が半数以上を占めるのが訪日中国人の支出の特徴であり、宿泊日数が多い割には宿泊料金が伸びていない。
 
その原因は、第一にクルーズ船での来日が増え、日本滞在中においても、船内での宿泊を行うことで、ホテルの利用が減ったことが挙げられる。また、訪日中国人が民泊の利用に積極的であり、宿泊料金の単価自体が下がっていることも影響している。
 
訪日中国人の旅行トレンドのキーワードが、「個人旅行客(FIT)」「同伴旅行」「コト消費」などに見出される中で、ホテルはクルーズ船内での宿泊や民泊と負けない魅力をいかに発揮するか。グループで楽しめるような企画や商品、子ども連れのファミリー層が楽しめたり参加しやすかったりする魅力的な経験型プランの開発が、中国人ニーズを獲得する近道と言えそうだ。

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