日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年7月の訪日外国人数は343万7千人となり、前年同月(329万2,602人)比で4.4%増加した。前月(2025年6月、337万7,800人)からは1.8%の増加であり、訪日需要の回復基調が続いていることがうかがえる。東南アジアなど一部地域では夏場に需要が落ち着く傾向があるものの、長期休暇に合わせた需要増が全体を押し上げたと考えられる。
(JNTOの資料を基に作成)
国別では、中国が最多で97万4,500人が訪日した。これは前月(79万7,900人)から22.1%増、前年同月(77万6,520人)比でも25.5%増となった。背景には、上海~熊本、青島~静岡といった新規路線の就航や、瀋陽~関西、上海~広島間の増便など地方路線の拡充、クルーズ船の寄港、学校の長期休暇の影響などがあるとみられる。
2位は韓国で、訪日者数は67万8,600人であった。前月(72万9,800人)比では7.0%減、前年同月(75万7,679人)比でも10.4%減となった。地方路線の増便や休暇需要はあったが、東南アジアや中国方面への旅行人気に加え、日本での地震に関する情報がSNSで拡散されたことなどが、訪日需要を抑えた可能性がある。
3位は台湾で60万4,200人が訪日した。前月比3.3%増、前年同月比5.7%増と堅調に推移した。4位の米国は27万7,100人で、前月(34万5,100人)からは19.7%減となったが、前年同月(25万1,218人)比では10.3%増を示した。5位の香港は17万6,000人で、前月(16万6,800人)比5.5%増となった一方、前年同月比では36.9%減少している。
全体として、東アジア市場の動きが訪日需要の中心であり、特に中国の回復が全体を牽引した。台湾も単月として過去最高を更新するなど堅調に推移した一方、韓国や香港は減少傾向を示し、市場ごとの差が鮮明となっている。
一方、米国をはじめとする中長距離市場の成長も顕著であり、7月として過去最高を記録するなどグローバルな旅行需要の復調が日本のインバウンド市場を押し上げている。欧州や東南アジアの一部市場でも需要拡大が確認され、市場の多極化が進んでいる。
今後の戦略としては、中国・台湾市場の成長を確実に取り込むとともに、韓国・香港市場の回復に向けた施策が求められる。加えて、中長距離市場へのプロモーション強化や、多様化する訪日目的に応える観光資源の整備、地域分散型の受け入れ体制の構築が不可欠である。持続可能な観光の推進が、今後のインバウンド市場拡大の鍵を握るだろう。