株式会社JTB総合研究所が実施した「インバウンド旅行者への情報提供に関する調査(2024)」により、訪日旅行者の行動変化や持続可能な観光に対する意識が明らかとなった。2023年度の調査では、約8割の訪日旅行者が「旅マエ」に旅程をほぼ決定していることが確認されたが、今回の調査結果も早期情報提供の重要性を再確認させるものとなった。
台湾やアメリカなどからの訪日旅行者は、日本を複数回訪れる傾向があり、特に台湾の旅行者は77.4%が、アメリカの旅行者は53.6%が1年以内に再訪を希望している。両国ともに東京、大阪、京都、北海道が次回訪れたい都道府県として人気であり、台湾では沖縄、アメリカでは福岡も挙がっている。
旅ナカで得た情報が次回の旅行先に影響を与えていることも判明しており、例えば台湾では温泉やスイーツ店、アメリカではテーマパークや高級レストランが次回の訪問先として高く評価されている。この結果は地域ごとで特徴が分かれており、共通して高い人気を示したのは、「神社仏閣」と「地元の人に人気のカジュアルな飲食店」であった。次回の旅行で行ってみたいと思った理由としては、「直近の旅行の予定が詰まっていて時間がなかった(37.2%)」が最も多く挙げられ、次いで「直近の旅行で訪れて気に入ったから(35.4%)」が続く。同じ場所を繰り返し訪れることを想定し、旅ナカで次回の訪問先の情報を集めていることも多いと予想され、次回の旅行のお楽しみとして取っておきたい、という意識がある可能性も存在する。さらに、「直近の旅行先から離れた場所だった」という理由も3割程度あり、旅行の滞在先から距離があるエリアの情報だとしても、次回の旅行先の候補としては、興味深い情報として旅行者に受け入れられる可能性があると考えられる。
また、旅行者が日本国内で得る情報の出所にも国別の傾向がみられ、台湾の旅行者は動画投稿サイトやインターネット検索を、アメリカの旅行者はSNSを多く利用していることがわかった。特にアメリカの旅行者は、台湾の旅行者に比べて滞在日数が長いせいか、ホテルのコンシェルジェやお店のスタッフ、交通広告、現地のメディア、ポッドキャストなど様々な情報源から情報を得ている様子も明らかとなっている。さらに、訪日旅行者が関心を持つ画像の内容は年代によっても異なり、29歳以下はアウトドアやお酒に興味を示し、50歳以上は食や景観に関心を持つことが明らかとなった。
調査によると約9割の訪日旅行者が帰国後にも日本の土産物を購入していることが分かり、台湾の旅行者は日本で訪れたお店や街のECサイトを利用し、アメリカの旅行者は自国内の店舗やECサイトを利用して土産物を購入している傾向がみられた。具体的な購入品としては、台湾の旅行者はスナック菓子や食品が人気である一方、アメリカの旅行者は伝統工芸品やキャラクター商品など食以外のものも多く購入している。
今回の調査では、旅ナカで提供される情報が次回の旅行に繋がることが確認された。旅行者にとって有益な情報を、旅行中だけでなく次の旅を見据えた提供の仕方が今後の観光産業において重要となる。また、旅行者の属性に応じた情報提供の工夫が、より良い旅行体験の提供に寄与する可能性があると言える。