株式会社SHIは、レジデンスホテル「ストライプ札幌」を本年11月中旬に開業。2020年までに札幌エリアで1,000戸以上の客室運営を目指す。札幌市の宿泊市場から「長期滞在・多人数」を強みとする同ホテルの競合について分析する。
出典:SHI
レジデンスホテル「ストライプ札幌」
福岡県博多区でレジデンス型ホテルを展開するSHIは、2018年11月中旬に札幌支社の設立及び新規ホテルであるストライプ札幌を開業する。
ストライプ札幌は、JR札幌駅北口から徒歩5分圏内と好立地に位置(住所:北海道札幌市北区北七条西6-2-27)しており、客室数は165室と大型の宿泊施設となる。設備は博多にあるレジデンスホテル同様に通常の客室に加え、キッチン、冷蔵庫、洗濯機を完備。ビジネス利用に加え、今後さらに成長が見込まれるインバウンド需要の取り込みに力を入れていく。
さらに、SHIは福岡と同様に札幌エリアで1,000戸以上の客室開業を2020年までに行う計画であり、年内に新たにレジデンスホテル札幌も新規開業予定である。
出典:SHI
札幌市ホテル展開事情
先月、北海道胆振東部地震に見舞われた札幌だが、現在では概ね復旧して通常通りのホテル運営が行われている。
札幌市のカテゴリー別の宿泊施設の推移を示すのが以下のグラフである。出張や単身赴任が多い札幌市ではビジネスホテルが多いのは自然である。しかしながら、訪日客の増加により外国人向けの簡易宿所が近年増加傾向にあり、宿泊施設のターゲットも変わりつつあるようだ。
出典:メトロエンジンリサーチ
ビジネスホテルは出張需要に対応するために均一的な伸び率で伸び続けている。また、2013年頃から急激に伸びているのがゲストハウス、ドミトリーなどの簡易宿所である。部屋数こそ少ないものの簡易宿所という施設が急激に伸びている背景には訪日外国人の伸びが影響している。
供給過多の可能性も 札幌でホテルの開業ラッシュ
新規開業予定のホテルとしては、100室〜300室規模のビジネスホテルの開業が札幌駅から「すすきの」など利便性の高いエリアで多数予定されている。合計17施設ほどの開業が札幌市中心部だけで予定されており、以下の地図が新規開業予定の施設の分布である。
出典:メトロエンジンリサーチ
2018年7月の観光庁の宿泊旅行統計調査によると、北海道の客室稼働率は東京、大阪についで3位と高い稼働率を保っている。また今後、札幌市では新規路線の開業により、東アジアからの新規需要も見込まれている。他方で、激増するホテルにより供給過多になる恐れもあり、今後ホテルの競争が激化していくことは間違いないだろう。
長期滞在・多人数で民泊施設と競合
札幌のホテル需要は特に、毎年夏と冬に稼働率が上がっているが、要因としては夏休みシーズンと札幌の観光資源(高原、避暑、温泉)のタイミングが合致していること、2月は「札幌雪まつり」「スキー・スノーボード」が重要な観光資源であることが伺える。
こうした時期には以下のグラフの通り、民泊の利用の増加も確認できることから、札幌に来る訪日客の民泊利用が夏冬の繁忙期に拡大していることが分かる。
札幌市民泊物件数と稼働率
出典:メトロデータ
株式会社SHIが運営するレジデンスホテルの特長は、キッチンなどを備え、3人~9人が同室に宿泊でき、家族旅行などの団体客が「住む」ように快適に長期滞在できることとしていることから、こうした民泊物件も手強い競合となると言えるだろう。
同ホテルにとって訪日客需要の獲得が札幌市での激増するホテルの中で勝ち抜く鍵となるが、レジデンスホテルのメリットを活かすには、ビジネスホテルとの差異化だけでなく、「長期滞在・多人数」向けで共通する民泊施設との競争に打ち勝つ必要がある。