Go To トラベル事務局は10月29日にビジネス出張を目的とする旅行商品について、「割引の適用除外など、利用を制限するための措置を講じる」と発表した。この改訂により、多くのビジネスホテルは窮地に立たされる。
地域経済やコロナ後のインバウンド需要にリスクも
2020年10月29日、Go To トラベル事務局は「Go To トラベル事業の支援対象とする旅行商品の基準・考え方の明確化について」と題し、支援対象の対象外となる旅行商品を発表した。
運転免許取得の合宿やコンパニオンサービスを含む旅行商品が話題になったことで、これらの旅行商品が「観光を主な目的とした旅行の支援」というGo To トラベルの趣旨から逸脱すると問題視。今回の支援対象の基準の明確化と対象外の発表につながった。
公式サイトに掲載されている「対象外となる商品例」は以下の通り。
◯通常の宿泊料金(10,000円程度)を著しく超える、館内のルームサービス、食事等でいつでも利用できるホテルクレジット(30,000程度)付宿泊プラン
◯通常の宿泊料金(5,000程度)を著しく超える商品(30,000円程度)付きの宿泊プラン
◯ヨガライセンス講習(4泊5日200,000円~)、英会話講習付き宿泊プラン(2泊3日28,000円)、ダイビング免許付き宿泊プラン(50,000~100,000円)
これらに加え、ビジネス出張を目的とする旅行商品についても、「法人の出張手配を目的とした予約サイトにおける割引の適用除外など、利用を制限するための措置を講じる」としている。
Go To トラベルの利用が多くなる中、事業の趣旨にそぐわない旅行商品を対象外とするのは自然なことだが、規制が過剰だと低価格帯のビジネスホテルが致命的なダメージを負ってしまいかねない。
そもそも低価格帯のビジネスホテルはそれほどGo To トラベルの恩恵を受けていない。元の宿泊金額が低価格のため、割引金額も低くなる。Go To トラベルでは最大20,000円の割引を受けれるため、「せっかく安く泊まれるなら」と観光客はいつもよりグレードの高いホテル・旅館を選ぶ傾向にある。
実際に低価格帯のビジネスホテルは、ほとんどの宿泊客はビジネス客だ。ビジネス出張を目的とする旅行商品の割引がなくなると、窮地に立たされる恐れがある。既に営業を取りやめたホテルも多数あり、今回の改訂でさらに拍車がかかことも考えられる。
また安価なビジネスホテルがなくなると、インバウンドが戻った時に宿泊客の受け皿がなくなるリスクがある。ホテル自体の数が足りなくなることで、外国人旅行者の受け入れやリピーターの獲得が難しくなるのは明らかだ。
新型コロナウイルス感染症の影響により、政府が以前から目標としていた4000万人の観光客は達成が大きく遠のいた。だがビジネスホテルが少なくなると10年単位で達成が難しくなるリスクがある。
そもそもビジネス用途での宿泊は、観光では行き渡りにくい消費にも繋がっている側面があるのではないだろうか。観光目的の旅行は土日祝が多く、観光目的の旅行のみでは平日の供給(部屋在庫)は埋めることは難しい。平日にビジネス目的の宿泊客がいることで、地域の飲食店などでの消費にもつながる。
高価格帯の宿のみが生き残っても、地域全体に波及効果があるのか疑問が残る。高価格帯宿の宿泊客だけでなく、さまざまな宿泊客が訪れることで、地域全体の消費につながるのではないだろうか。
ビジネス目的の旅行がGo To トラベルキャンペーンの対象外になった今、ビジネスホテルや低価格帯のホテル救済する新たな策が早急に求められる。
なお支援対象外は11月6日(金)の予約販売分から。既に対象外となる旅行商品を予約している場合は、引き続き支援の対象となる。