札幌市の民泊物件は6月の民泊新法施行後、1,000件を超え全国の市区町村でトップとなった。ホテルは民泊とどのように差別化を図っていくのか。特に設備・サービスで高評価を獲得する「ベッセルイン札幌中島公園」の取り組みについて着目した。
民泊物件数全国トップの札幌市の民泊事情
観光庁が発表した、9月28日時点での「各自治体ごとの住宅宿泊事業の届出の提出・受理の状況一覧」によると、全国の自治体で、札幌市は2位の大阪市の届出提出件数972件、受理件数703を大きく上回りトップとなり、届出提出件数1,117件、受理済み件数1,052件、受理率は94%に上った。
メトロエンジンリサーチによると、以下のグラフの通り、札幌市の民泊物件の物件タイプはマンションの一室であることが多く、部屋タイプは個室、ワンルーム、1LDKなどの割合が高く、一部屋あたりの平均客室単価は14,403円(一泊)であった。
出典:メトロエンジンリサーチ
札幌市の民泊と競合となるのはこれらの客室単価や部屋タイプに近いビジネスホテルやシティホテルとなり、より強く民泊との競争による差別化を迫られている。
民泊物件真っ只中、ベッセルイン札幌中島公園
そこで、今回注目したのは、札幌市中央区にある「ベッセルイン札幌中島公園」(196室)だ。
各種OTAサイトに投稿されたレビュー評価を基にした、メトロエンジンリサーチのレビュー分析によると、札幌市中央区にある宿泊施設は156あるが、同ホテルは同区の平均スコアの3.82点を大きく上回り、4.61点でトップクラスのレビュー評価となった。
同ホテル周辺1キロ圏内の地図は以下の通り。
出典:メトロエンジンリサーチ
同ホテルが赤ピン、紫色ハウスマークは新規開業予定のホテル、緑マークは既存ホテルで大小は部屋数規模、薄い赤色は民泊物件を表している。
民泊物件がひしめく札幌市中央区の中でも、民泊物件の真っ只中に展開する同ホテルが差別化を図るサービスとはどのようなものなのか。
宿泊客への無料レンタル備品が充実
同ホテルの人気の理由の一つは、無料レンタルできる25種類以上の備品が常に用意されていることである。
ビジネスでの宿泊客向けにはアイロン・アイロン台やズボンプレッサー、女性客向けにはスチーム式美顔器やヘアアイロンなどがある。
また、ファミリー向けの備品として、ベビーカー、紙おむつ、子供用便座、哺乳瓶消毒セット、子供用体温計、絵本、子供用おもちゃなどの備品も充実している。
さらに、観光客向けにはレンタサイクルの提供(3時間まで無料、以降は1日500円)も行なっている。
出典:ベッセルイン札幌中島公園
民泊と差をつける日常を超える快適サービス
民泊物件ではキッチン付きの部屋など長期的な滞在に必要な設備が整っていることは多いが、同ホテルが用意しているほどの充実した備品がある物件は殆どない。
その上金額的には、ビジネスホテルは通常1ー数名、民泊物件は多人数での宿泊が可能なため、1名あたりでは割安になりやすいことに条件の違いがあるものの、同ホテルの一泊の宿泊料金は一室15,000-20,000円ほどと先述の札幌市の民泊の平均客室単価14,403円と大差ない価格帯となっている。
同ホテルは、上記のような備品のレンタルができるということを宿泊客に案内し、実際に利用してもらうことによって、設備に対してのレビュースコアの向上だけではなく、従業員のサービスに関するレビュースコアにも良い影響を与えている模様だ。
札幌のように民泊と競合する地域では、民泊の「日常と変わらない暮らしができる」という強みに対し、ホテルは「日常では味わえない」さらなる快適性を提供することが求められており、その点が民泊との競争に勝利するポイントと言えそうだ。