最近では、ダイナミックプライシングを取り入れたサービスを目にする機会が増え、日常に浸透しつつあります。
そこで、自社でもダイナミックプライシングの導入を検討しようにも仕組みがわからず、頭を悩ませている担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、ダイナミックプライシングの仕組みを、導入事例とともにわかりやすく解説します。
ぜひ、本記事を参考に、収益の最大化を狙うためにダイナミックプライシングを理解してください。
ダイナミックプライシングの基本
ダイナミックプライシングとは、商品・サービスの需要に合わせて価格や料金を変更し、最適な価値で提供する仕組みを指します。
季節や周辺状況によって需要が変化しやすいホテル業界や航空業界で取り入れられたのが発端です。
例えば、夏休みになると多くの方が旅行のために飛行機や宿泊施設を利用するようになります。
しかし、夏休みが終われば利用者はグンと減るため、同じ価格帯で提供し続けると収益に損失が生まれやすくなるのです。
需要が多い時に価格を高く設定するからこそ、需要が少ない時期に価格を下げてニーズを高め、安定した収益を得る、というのがダイナミックプライシングの基本になります。
ダイナミックプライシングの仕組み
ダイナミックプライシングについて理解するために、仕組みについて深く解説します。固定価格を100と設定したサービスAを提供すると仮定して話を進めていきましょう。
ダイナミックプライシングで収益が増加する仕組みの例
固定価格が100のときに、サービスAが6回利用された場合、100×6なので600が収益です。
一方、ダイナミックプライシングを用いて、収益の最大化を考えた場合、サービスAの価格を80にして8回利用を狙うことができます。
そうすると、80×8=640になるため、収益は40のプラスとなり、通常価格で提供するよりも利益が出ることになるのです。
上記のように、価格を変動させてサービスAの利用を増やせると、価格を固定するよりも収益が増えるのがダイナミックプライシングの仕組みといえます。
ダイナミックプライシング導入のメリット・デメリット
ダイナミックプライシングの導入には、当然メリットもありますが、デメリットも存在します。特に導入をする際には、デメリットが自社にとって問題ないのかどうかも含めて確認してみてください。
メリット①:最適価格による収益の最大化
ダイナミックプライシングは、需要の変化に応じた最適価格での提供ができるので、収益の最大化が狙える点が最大のメリットです。
高需要の際には価格を高くして提供できる分、閑散期には価格を低くして顧客の利用しやすい環境を作れます。
最適価格を把握するには、過去の膨大なデータから正確な未来の需要予測が必要です。
そのため、ダイナミックプライシングを導入している企業は、AIによるシステム活用が積極的に行われています。
メリット②:在庫や人的リソースの削減
ダイナミックプライシングを取り入れると、在庫や人的リソースの削減ができます。
ニーズに合わせて商品・サービスの価格を決めて提供できるため、余剰在庫になりにくいです。
また、ダイナミックプライシングシステムを導入すると、マーケティング部門の業務圧縮を改善できるので、人的リソースの確保にもつながります。
特に、手動による知識・経験から価格決定を行っている場合は、業務負担が大きくなるだけでなく、予測が異なってしまう場合も少なくありません。
しかしAIを活用すれば、より的確な価格帯での提供が実現するので、人的リソースを削減しながらリターンの最大化を狙うことができます。
メリット③:顧客満足の向上
顧客にとって商品・サービスを安く利用できるチャンスにつながる点もダイナミックプライシングのメリットです。
需要が増えると価格が高くなるからこそ、価格の低い時期に利用したいという方もいるでしょう。
そうすると、安い時期に利用できてよかったという顧客満足につながり、なおかつ業務の平準化にも期待できます。
ダイナミックプライシングは企業側だけでなく、顧客にとって満足できる仕組みでもあるのです。
デメリット①:初期投資にコストがかかる
ダイナミックプライシングを手動で導入する企業は少なく、多くの場合、システムを導入するはずです。
そのため、初期投資にコストがかかってしまうデメリットは避けて通れないでしょう。
しかし、初期投資にコストをかける分、収益は価格固定で提供するよりも増える可能性があるため、十分に回収可能です。
長期的な視野で見るとプラスにはなりますが、初期段階がマイナスになる点は把握しておきましょう。
デメリット②:顧客からの反感を招いてしまう可能性がある
突然ダイナミックプライシングを取り入れてしまうと、顧客からの反感を招いてしまう可能性があります。
特に、需要が高い時期に利用する顧客にとっては、従来よりも多く支払わなければならないため、不満が増えてしまうでしょう。
事業開始とともにダイナミックプライシングを導入するなら別ですが、商品・サービス提供の途中での導入は、より慎重にならなくてはいけません。
事前に価格変動制を導入する旨を告知する、導入に賛成・反対のアンケートを実施するなどして、顧客への反応を収集しておくといいでしょう。
商品・サービス、あるいは顧客の反応によっては、ダイナミックプライシングを用いない方がいい場合もあります。
そのため、顧客の反感を招いてしまわないよう、十分な配慮の上でダイナミックプライシングを導入してください。
ダイナミックプライシングの導入事例
日常生活において、需要に応じて価格が変わる仕組みを取り入れているシーンは多く見かけます。
ここでは、ダイナミックプライシングがどのような業界で取り入れられているのかについて見ていきましょう。
航空業界
ダイナミックプライシングを浸透させたのは、航空業界といっても過言ではありません。
飛行機の搭乗は、余った座席を翌日に持ち越すことができないため、当日にどれだけ売り切るかが収益の鍵となります。
需要が高くなる行先、シーズンによって航空チケットの価格が高くなり、逆に需要の低いチケットは安くなるのが基本です。
また、搭乗日以前から航空チケットの購入予約をしてくれた顧客に対しても、価格が安くなるサービスを提供しています。
翌日に在庫を持ち越せないからこそ、収益の安定化のために早期購入割引を組み合わせているのが航空業界の特徴です。
ホテル
ホテルも翌日に在庫を持ち越せない業態のため、ダイナミックプライシングを取り入れています。航空業界とは違い、ホテル業界は競合が多く、季節やイベントによって左右されやすいです。
そのため、早期予約や予約キャンセルの際は通常価格より安く利用できる、といったシステムを導入しているケースが見られます。
他にも、以下のようなダイナミックプライシングの活用があります。
・当日利用顧客もいるため、安い料金と通常料金で提供する部屋を設ける
・当日キャンセルがあった際に「ワケありプラン」として該当の部屋を安い料金で提供する
レンタカー
ここ数年でダイナミックプライシングの導入が加速しつつあるのが、レンタカー業界です。
単純に車を借りる際の需要に合わせて料金が変動するだけでなく、レンタカーの利用が安くなった際に、顧客へ知らせるWebサイトなども海外では取り入れられています。
レンタカーの需要は、シーズンだけでなく、時間や天気、周辺のイベントにも影響するため、予測が難しいとされていました。
しかし、AI技術の発展によって、ビッグデータをもとに的確な価格提供の予測ができ、ダイナミックプライシング導入の動きが見られるようになったのです。
ダイナミックプライシングの導入手段
ダイナミックプライシングを導入する際は、以下の方法の中からいずれかを選択する必要があります。
・自社開発
・ツール利用
・受託開発
もし、システム開発ができる部門が社内に存在するなら、自社開発するのがいいでしょう。
ただし、部門が存在しない場合は、自社の業界向けのツールがあるかどうかで、ツール利用・受託開発かを見極めてください。
まとめ
ダイナミックプライシングは、需要に合わせて価格を変動させることで、収益の最大化を狙うことができる仕組みです。
現在では、航空業界やホテル業界をはじめ、実に多くの業界で取り入れられており、事業によっては抵抗感なく受け入れられる場合もあるでしょう。
ただし、メリットだけでなく、デメリットも必ず理解しておき、自社にとって最適かどうかを判断しなくてはいけません。
ぜひ、ダイナミックプライシングの仕組みを理解して、自社に活かせるかどうかを検討してください。
■記事作成:メトロエンジン株式会社
2016年創業。ダイナミックプライシングを活用したSaaSシステムのパイオニアとして躍進。ビックデータから人工知能・機械学習を活用し、客室単価の設定を行うダイナミックプライシングツールをホテルなど宿泊事業者に提供。また、レンタカー業界や高速バス業界など幅広い業界のDX支援事業も展開している。