ホテルのレベニューマネジメント業務を手助けするツールがホテル向けに提供され始めるようになった2015年以降、数多くのツールが登場してきた。その中でも価格の変動部分であるダイナミックプライシング業務をお手伝いするツールの登場がホテルのDX化を促進するため、数多くのホテルが導入を始めている。そんな中、誇大広告などとの声が現場から上がっているツールが登場しているため注意喚起の一貫で一部の事例を紹介したい。
そのようなツールの中には、WEBのトップページや資料等で「RevPARが10%向上!」などと大きく表示し、消費者であるホテルに、このツールを導入すれば、ホテルの主要KPIであるRevPARがあたかも10%上昇するかのような景品表示法上の問題点を孕んだ疑いのある宣伝を行っているツールが存在する。
ホテルのRevPARとは、一室あたりの宿泊売上x稼働率で算出されるが、ホテルの宿泊売上や稼働率は様々な要因によって変動する。代表的なものを紹介する。
- 宿泊需要
- 宿泊供給
- 季節要因
- 競合施設の価格設定
- 自施設の価格設定
- 自施設・競合施設のマーケティング及び、キャンペーンの実施状況等
このような多岐にわたる要因によってゲストの判断が変わるため、ホテルの売上・RevPARも同様に複雑に変動する構造である。そのため、自社のRevPARにおける価格設定のみの効果を図るのは実務上不可能なのである。
仮に、価格設定のみにおける効果を厳密に計算するためには、それは、季節要因なのか?宿泊需要・供給要因なのか?競合価格の要因なのか?マーケティングや口コミが影響したのか?などすべての要因における影響を計算し、これらの影響を除外した上で効果を図らないと行けない。いわゆる、Apple to Apple である。
現在ホテルバンク編集部で確認しているRevPAR向上を謳っているレベニューマネジメントツールは船井総合研究所社が提供するJudge Priceである。
https://lpsec.funaisoken.co.jp/digital/workstyle/ryokan/
このツールでは2021年12月15日現在、WEB上で「RevPAR10%向上!」と謳っている。
ホテルバンク編集部において、同社ツールにおいての表示矛盾点が複数確認されたため、詳細や他のレベニューマネジメントとの詳細な比較表をもって次の記事で大きく掘り下げる。
RevPARが改善する!などというような営業を受けたホテルは是非、どのように定量的に改善を計測するのか確かめる事をお勧めしたい。
また、ホテルバンク編集部では消費者庁が規定する、誇大表示の禁止や景品表示法第5条第2号の違反の可能性もあるため、同社の問題点を指摘した内容を消費者庁へ送付する。